原油・原材料高騰の対策事例 “金型4社の連携について”

2008年8月9日

松田 一男

 

原油・原材料の高騰が続く中、大企業、中小企業ともにはその対応に追われています。トヨタ自動車は、バブル崩壊後の不況以来の危機と考え、「緊急VA(バリュー・アナリス)」と呼ばれるコスト削減策に取り組んでいるそうです。今回は新型車のコスト削減だけではなく、販売中の車種まで含めています。VAによって、使用鋼板は種類の2割削減、樹脂部品は耐久性を落とさず、厚さを半分にし、材料使用量の3割削減を目指すようです。

 

ここに紹介する事例は2008年7月30日(水)に日経新聞に載ったのもので、金型業界の比較的小さな中小企業が原油・原材料の高騰対策として、コスト削減のみならず、更に一歩進んで共同開発をも、いかに実現したかを紹介します。

 

 

 

 日本の金型業界では多くの企業が、海外への技術拡散、低価格化、短納期化のスピードの

速さに伴う変化に自立的な対応が難しく、衰退の危機にあります。

 

1.金型業界の現状

  金型産業の特徴は、一般的に次のように言われています。

   @金型製品は一品料理品

     ・一品毎にオーダーメイドで、時間と手間をかけ製作

   A量産用マザーツールのため、高い精度が要求される

   B設計期間が短く、仕様変更が多い

     ・親会社の設計と量産のはざ間にあって、双方の影響を受ける

   C設備集約型で、投資負担が大きい

     ・金型の設計制作には、CAD、CAM、NC加工機、測定器等が必要

   D中小企業が多く、下請形態が約80%を占める

   E日本は世界一の実績(シェア約30%)

  

  次に金型業界における一般的な現状を、以下に列挙します。

   @仕事量の減少

     ・親会社が海外へシフト

     ・海外企業との競争が激化

 

   A価格の低下

     ・メーカーの国内外の競争激化から、製品価格から逆算した金型価格の要求

   B短納期化

     ・親会社の開発遅れの押し付け

     ・金型業界の国内、海外での競争激化

   C図面提供問題(ノウハウの流出)

     ・海外生産の保守用という名目で要求

   D技能の継承

     ・設計(金型構想(型組み))技術者の高齢化、若手後継者の不足

      ・加工機の高精度化、デジタル化のメリットデメリット

E資金難による設備更新の停滞

     ・仕事量の減少、価格の低下で新規投資が採算に合わず

   F利益減少

     ・関東地方の金型屋の9割は赤字状態

   G廃業倒産の増加

     ・金型業界の将来に嫌気がさし、廃業

 

 

 

 金型にはいくつかの分野がありますが、この事例は自動車、家電、住宅建材のプラスチ

ック部品やパネルを成型する金型の話です。

 昨今の原油・原材料の高騰は、上に述べた厳しい金型業界に、追い討ちをかけるような

大きな影響を与え、収益が大きく悪化しており、例えば、原料コストはこの1年で2〜3

割アップしています。金型業界はこの対応に大変苦慮しているところです。

 

 

2.アジアの台頭例

   アジアのメーカーは、日本の技術者の導入や自助努力によって徐々に力を付けてきて

おり、設計技術でも向上が見られます。

   例えば、台湾の鴻海精密工業では、設計から成型までを24時間体制で対応し、低コス

ト・短納期を武器に日本からの受注も獲得しています。

 

 

3.日本の対応方向

 金型業界の生き残りのための改革目標は、次の点にあると言われています。

   @付加価値の確保

   Aリードタイム短縮、納期短縮

   Bコストダウン

   C加工の高度化

   D設備の共同利用、協業化、連携

   E多品種少量生産用金型作り

   F海外市場、親会社海外シフト対応

 

 

 金型業界の現状とアジアの台頭を考えると、比較的小さな中小企業が国際競争力をつけ

るため、単独企業だけでは難しく、企業の合従連衡などの企業連携、再編が必要になるで

しょう。しかし、金型業界はオーナー企業が多く、他企業との連携には消極的でした。そのよう

な業界にあって、今回の事例は比較的小さな中小企業が、1企業が単独ではなく共同で対応

する事例は、ひとつの貴重な事例になるでしょう。

 

 

4.今回の事例

   金型の設計・製造の関連会社4社が共同出資会社を設立し、そこを通じ原料資材の共

同購入や生産協力を行い、コスト削減と共同開発でこの厳しい状況に対応しています。

   

***** 参考図表を参照ください  ***** 

 (1)連携会社

     各社の売上規模は、9〜17億程度でそれほど大きくはありません。連携各社の会社

名、所在地、得意分野は次のようです。

会社名

所在地

得意分野

@ペッカー精工

埼玉県東松山市

家電、OA機器向け金型

A岐阜多田精機

岐阜県岐阜市

自動車の内外装部品金型

B清光金型

群馬県伊勢崎市

C日本彫研工業

東京都板橋区

 

 

 (2)共同出資会社

     新会社「マザーツール」(埼玉県川越市)の社長は、ペッカー精工社長が兼務していま

    す。新会社の主な機能は、次の4つです。

      @連携4社の受注情報、原材料購入情報等の集約

      A原材料(鋼材など)、工具の共同購入

      B連携4社の工場の繁閑、保有技術を考慮した受注、生産計画の策定

      C連携4社の保有技術や生産設備の共有、設計の相互委託

 

 (3)新ビジネスモデルのメリット

     新会社設立による効果には、各社の単独経営では見られない諸点が出ています。

      @共同調達による原材料費の低減

      A保有技術・設備の融通し合いによる受注から出荷までの期間短縮

      B納品後のメンテナンス事業でも協力し、他社製造の金型も引き受ける

      C新事業の展開

 

 

 

この4社連携に際しては、各社の信頼関係と、リーダーシップ会社の存在が大きかったこ

とが想像されます。又、これら4社のような連携を効率的に促進するためには、触媒役、コーディネータも必要です。私たち中小企業診断士集団の“平十会”がお手伝いすることがあると思います。是非、ご相談ください。

 

 

 

 

 

 

参考資料

 1.日経新聞  2008年7月30日 「金型4社連携」

 2.〃       2008年8月1日  「トヨタ曲がり角」

 3.経済産業研究所 2002年5月24日講演会

   「日本の金型産業に何がおきているか」 堀信夫 山城精機製作所社長

 

 

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