平十会 2010年3月7日 塩澤 致
中国経済の最新動向と日本企業の取組 2010年1月14日講演より
沈才彬 多摩大学教授(旧三井物産戦略研究所 中国経済センター長)
1.
米国金融危機は中国経済にも大きなダメージがあった
(ア) 実体経済への影響
@ 輸出急減、GDP成長失速07年13%⇒09年1Q6.1%成長へ
A 不動産バブルも崩壊
ただし投資と消費は堅調だった。
(イ) 09年の最大の懸念材料は失業問題(社会不安)
@ 内定率が低い大卒(大卒610万人、就職浪人100万人)
A 失業者になれない農民工(2000万人)
⇒職業訓練、軍隊
2.
中国が一番先に景気回復できた理由=共産党一党支配
(ア) 政変には弱い
@ 1967年文化大革命、劉少奇国家主席失脚(GDP-7.2%)
A 1976年ケ小平失脚、毛沢東病死、4人組逮捕(-2.7%)
B
1989年天安門事件、趙紫陽失脚(11.4%⇒4.1%)
(イ) 外部危機には強い(決断、行動が速い)
(人民元切り下げなし、大規模公共投資、銀行に資本注入し不良債権を改善)
@ 1997年アジア通貨危機 (7.8%)
A 2001年米国ITバブル崩壊(8.3%)
(ウ) 奥が深い中国経済(沿岸部と内陸部)、大型景気対策効果(4兆元)
3.
2010年中国経済の見通し
(ア) 二番底の心配はない
(イ) 輸出回復は期待されるが、金融危機前の水準回復は困難
(ウ) 10年の経済成長は9%以上(牽引役は、投資と個人消費)
@ 万博景気(5月−10月)
A 広州アジア大会(11月)
B 高速鉄道網(全国に総延長12千kmを建設する計画)
高速新線(最高速度300km/h)を南北方向に4路線、東西方向に4路線の合計8路線を2020年までに整備の計画
例)北京−天津間済み、北京−上海間、武漢−広州−深セン(香港)、石家庄−太原
C 香港―マカオー珠海大橋着工
4.
10年の要注目動向
(ア) 株式市場(現在3200元)4000突破視野に(ただし万博バブル要注意)
(イ) 車市場 新車販売、米中逆転が常態化(中国普及率6%、日本80%)
(ウ) 不動産市場 価格上昇続くが過熱傾向要注意
(エ) ビジネスの観点から3つの動向要注意
@ デフレからインフレ
(消費者物価は上昇へ)
A 沿海部の労働力過剰から労働力不足へ
華東、華南で労働力不足
B 資源安から資源高(鉄鉱石、石油、非鉄金属の値上がり注意)
5.
10年万博以降、中国経済は要注意時期
(ア) 中国が抱える時限爆弾“格差”(6倍の差)と“腐敗”
(イ) 13年は政権交代(権力闘争の可能性、不測の事態への対応の遅れ)
(例:03年SARS対応の遅れ、08年3月地方政府交代:チベット問題)
(ウ) 中国沈没は一時的なものにとどまる理由
@ 未完の工業化
A 未完の都市化(47%)
B 中間層・裕福層急増⇒市場拡大
(エ) 20年まで平均6−7%成長が続く
6.
迫られる日本企業の戦略転換
(ア) 2つの戦略転換が必要
@ 世界戦略 米国中心から新興国中心へ
A 中国戦略 世界の工場から巨大市場としての中国へ
(イ) 中国ビジネスチャンス
@ 暴食経済から省エネ・節約型への転換は日本企業の出番
A 急速な都市化、中間層・裕福層急増はビジネスチャンス
B 80後世代(一人子政策以降の世代が結婚適齢期)の消費動向に注目
・収入以上の支出(家庭連結決算)
C
日本人企業の成長には中国人社員の育成と活用が不可欠
日米比較:学歴別給与比較、能力主義、活用ポスト
蛇足:面の展開に対して、死命を制するリーダー供給体制
省を超えた異動への抵抗感
1、
省・都市毎に社会保障制度の差異があり、不利益を蒙る事がある
2、
省・都市毎に生活レベル、文化の差異が非常に大きく、伝統的な郷土意識を持ち他の地域に対する警戒感が強い
3、
夫婦共稼ぎが主流のため、配偶者の仕事を考慮する必要あり
4、
家族の繋がりを重視、両親の世話、子女教育環境を重視するため