原油・原材料の高騰と社長の仕事
                                                 2008.7.12
                                                 松田 一男
0.第3次オイルショックと言われている原油高騰
   参考  第1次オイルショック
       1973年10月(第4次中東戦争);1960年代のバレル当たり2ドル,
                          直前価格の3ドルから12ドルに高騰した。
        第2次オイルショック
       1978年末から79年春(イラン革命);30ドル台に高騰した。
 7月も値上げラッシュが続きます。
   @エネルギー関連
    ・石油元売り4社  給油所向け1リットル当たり7.3〜10円
    ・電力10社     標準家庭の1ケ月当たり60〜159円   
    ・ガス大手4社   標準家庭の1ケ月当たり128〜166円   
   A輸送機関連
    ・JAL、ANA    欧米線16,000円
    ・東京海上自動火災保険  自動車保険1〜1.5%
   B食品・食料品
    ・カゴメ        野菜飲料3.8〜9.4%
    ・日清オイリオ   食用油10%
    ・味の素       マヨネーズ4〜14%      
    ・全農        化学肥料1.6倍   
1.現状認識
   原油高騰の原因は、次の点にあると言われています。
     @需要増          新興国の高成長で需要拡大。相場が上がっても消費は落ちず。
                     補助金で国内価格を低く抑えている。
     A供給面での制約    産油国;原油高で潤う居心地が良い。結果、「供給不足でない」と
                          強調し増産せず。又、サウジ以外は余力乏しい。
     B米国発の金融不安    アメリカ株安、ドル安。利下げによる金融緩和で、金余り。
                      マネーがリスク金融商品から小さな原油市場に流れ込む。
   これまでにない高騰、それが続くようです。
       高騰の主原因「投機」への対策は、簡単ではなく長期化するでしょう。
          @アメリカの景気回復の見通しは暗い。
          A原油増産のために、今、設備投資しても効果は数年先になります。
2.対策
 これらの原油・原材料の高騰に、私たち中小企業の対応は、どうすべきでしょうか。
  原材料費が上がらないことを前提にした経営は、もはや成立しません。
  コスト増をどこまで転嫁できるか、需要が低迷する国内市場の価格転嫁も容易でなく、
  中所企業の6割は、製品・サービスの価格に転嫁できていません。   
  「コスト削減」というと、電気代やコピー代・消耗品などの節約や人件費の削減といったことしか
  浮かばないことが多いようですが、コスト削減は、全体観を欠けば小手先の効果のみになり
  やすいです。
  
 次に対応手順を考えてみましょう。
(1)現状認識
    原油・原材料高騰の貴社への影響を一般論ではなく、貴社への影響概要、状況を数値、
    決算の試算結果で示し、この事態を社員自身のものとして理解をうながす必要があります。 
(2)対応体制の整備
    対応は、トップダウン・ボトムアップの両面の推進が必要で、一方だけではうまくいかない
    でしょう。特に迅速な対応するためには、社長をリーダーとした全社を挙げた、コスト削減
    プロジェクトの発足をお勧めします。
(3)進め方
  @現状分析/実態調査
    コスト削減にあたって、まず自社の現状を分析し、解決すべき課題を明確にする必要があります。
    そのため、財務諸表等の資料を基に、定量的な問題点を浮き彫りにさせましょう。商品別、
顧客別、担当者別などのセグメント分析も活用しましょう。
  A対策の検討
    (1)対応の基本的な考え方  
         @総合的対処  部分的小手先ではなく総合的に視点で検討する。   
         A全員対処    社長から一社員、パートさんまで全員で検討、対応する。  
         B集中と選択  組織/個人でやること、今すぐやること/時間をかけてやることを
                    区分けし、メリハリをつけた推進をする。
         C目標の設定 プロジェクトとして、目標、期限、使用可能な経営資源等を明確に
                    し、ダラダラした運営は避けましょう。
    (2)着眼ポイント
        すべての活動、作業(プロセス)には、作業するためのインプットには材料、資料、
        情報等があります。それを人(又は機械)が、制度・標準、手順・ガイド等に従い、
        いろいろな道具、ツール、システム等を活用し、製品、成果物を生み出します。
        そのプロセスを改善する、生産性向上させる際の”視点”は、次の点です。
                  人   制度    ツール
       インプット                          アウトプット
                      プロセス
            インプット;材料、資料、情報     
            人 ;作業者、事務員等、又は工場設備、機械
            制度;仕事の制度、作業標準、作業手順、作業ガイド
            ツール;道具、ツール、システム
            アウトプット;製品、成果物、サービス
      今回の原油・原材料高騰の対策には、自社内できること、他社との協力でできることが
      あります。
       @コストダウンの視点    
         ・生産     設計・調達・製造工程・運搬の一貫した視点での生産性向上策を
                  検討しましょう。
         ・購買     VE活動(代替品等検討)、調達先・調達方法の変更等があります。
         ・人件費   パートの活用、内作・外注化の未直しも再度検討しましょう。
       A価格転嫁
          上記コストダウンと共に、難しいテーマですが、価格への転嫁も検討せざるを得
          ない可能性があります。その際は、事前の十分な準備と、トップセールスによる
          お客様の理解が絶対必須条件です。
    (3)モニタリング・継続的改善
        今回の施策は、1回限りで成功する可能性は低いと考えます。貴社はこれまでも
       改善活動をされていると思います。その上に今回の施策を打つわけですから、簡単
       ではないでしょう。1回目の施策を打ったらその結果を調査し、次の施策を打つこと
       必要でしょう。その継続がなければ、目標達成は難しいかもしれません。地道な改善が
       継続的に必要でしょう。
3.支援・施策の活用
  次に各省庁、県市の支援策には、次のものがあります。有効に活用しましょう。
  (1)中小企業庁
     原油価格高騰に関する中小企業対策
     @特別相談窓口の設置
         政府系中小企業金融機関、信用保証協会、商工会議所、商工会連合会、
         各経済産業局に特別相談窓口を設置し、相談に応じている。
     A資金繰り円滑化
       i. 政府系中小企業金融機関のセーフティネット貸付や信用保証協会のセーフティ
        ネット保証
       ii. 政府系中小企業金融機関や信用保証協会に係る既往債務に関し、個々の中小
        企業者の実情に応じた返済条件の緩和
     B下請適正取引等の推進
       i. 下請代金法の厳格な運用
       ii. 原油価格上昇に伴う下請事業者への配慮等を要請
       iii. 下請適正取引等の推進のためのガイドライン
  (2)神奈川県と横浜市
     @県
    ・単品スライド条項  原燃料の上昇分の一部を補填
       ・公共工事の分割発注
       ・融資拡大 「経営安定特別融資」
     A市
       ・セーフティネット 「特別対象業種の拡大」    舗装工事、木材チップ製造、、
       ・融資拡大 「経営安定資金制度」
4.社長の仕事
 これまでのお話をまとめてみますと、社長がすぐやるべきことは、次の2点と思います。
 @プロジェクトの立ち上げ     
     ・メッセージ発信    社長の本気度・意気込みを社員に発信しましょう。
     ・リーダーシップ    具体的で眼に見える活動を展開し、社長は旗振り役になりましょう。
       
 Aトップセールス
     ・納入先へのコスト転嫁     
           まずするかしないかの社長判断が、必要です。
           次に交渉の事前準備が大事です。取引実績、コスト限界点を知り、交渉に
           当たりましょう。
     ・仕入先、方法の検討     
           集中購買等の仕入れ方法の見直し、仕入先変更等の検討しましょう。
           原則は将来にわたるWin−Win関係の維持です。
5.ITの活用
   これら作業の迅速化、タイムリー性、効率性を確保するため、次の施策が必要になるために、
   PCを活用しましょう。
    @コストの見える化   実績収集にITを活用し、楽をする。
    Aコスト管理支援    実績を集計後、コスト削減ポイントの発見を容易化するため。
6.参考資料
    2008年6月28日  日経新聞
    2007年12月19日 中小企業庁のホームページ