最近の新型インフルエンザ状況と中小企業の対応について

9月12日

松田 一男

1.最近の流行状況

  

2009年8月20日の国立感染症研究所感染症情報センターの発表によると、

   ・以前実施していた全国からの感染者報告は現在実施していないが、全国約4800の“定点医療機関からの報告で、新型インフルエンザの流行状況を推計している。

   ・ここ1週間で、上記定点医療機関での受診患者は、平均0.99人で、季節性インフルエンザでの全国流行の目安をされる1.0人に近づいている。それを元にした推計では、全国で約6万人患者が1週間で発生したことになる。

   ・地域で流行はバラツキがあって、定点当たりで沖縄県(20.36)、奈良県(1.85)、大阪府(1.80)、東京都(1.68)、長崎県(1.50)、長野県(1.44)の順となっている。

  

最近の9月11日の報告では、発症者患者は急速な拡大がやや横ばいで、それでも週、全国推計

  約15万人で、沖縄県(22.66)、大阪府(4.26)、宮城県(3.85)、東京都(3.66)、福岡県(3.58)、北海道(3.53)、京都府(3.19)、千葉県(3.00)の順となっており、沖縄県で猛威を振るっており、冬季と同じ流行状況になっています。

又、9月9日には12人目の死亡者(うち60歳以上が半数)が出ました。

 

   最近の厚労省予測によれば、そのピークは9月末から10月に到来し、最悪1日76万人、週当た

り約530万人の発症が見込まれています。

又、アメリカでは、今後、国民の3〜5割が感染し、180万人が入院し、3〜9万人が死亡するとの

  予測もあります。アメリカでは例年、季節性インフルエンザで約3万6千人が死亡しているそうで、新型インフルエンザはその2.5倍の死亡者がでると予想していることになります。

 

 

 

2.現時点での新型インフルエンザの特徴

 

 幸いなことに、現時点では新型インフルエンザは、鳥・豚インフルエンザ程の毒性は持っていないようですが、その特徴を再度整理すると、は次の通りです。

@ほぼ全国民が感染者になる可能性あり。他人事ではない。

その感染経路は、@飛沫感染(感染者からの1〜2メートルで、感染者のせき、くしゃみによる飛沫を、口や鼻から吸い込んでの感染)、A接触感染(ウイルスに汚染されたドアノブ・電車のつり革、マスク等に触れた後、目・鼻・口の粘膜に触れての感染)、B空気感染(この例は極めてまれ。密閉された室内等の空気中に漂っているウイルスを吸い込み感染)の3つです。

かつては、老齢者には免疫があるかのように思われていましたが、現在ではほぼ全員に免疫がないことがわかりました。そのため、国民全員がいつでも、どこでも、だれでもが感染しうる可能性があります。又、これまでの感染者の大半は20歳以下の若者、子供で、これからも学校・幼稚園での集団感染が心配されています。

 

A国民全員のワクチンによる予防措置は期待できない。

ワクチンは、接種により体内にウイルスを攻撃する抗体をつくるが、感染は防げず、発症・死亡を減らすのみです。その有効性は年、人によって幅があるようで、発症を防ぐ有効率は約20〜80%と言われています。一方で、ある研究では65歳以上での発症は34〜55%減、死亡は82%減らす効果もあると、報告されています。

   a.量

厚労省の現時点での推測では、優先分必要ワクチン5,400万人分に対し、絶対数が不足する見込みで、年内に確保できる量は最大1800万人分のみで、全国民12,700万人の約14%です。この不足分は輸入により調達し、来年春までには6000万人分を確保できるとの厚労省の見通しです。

    b.時期

ワクチンの供給時期が、インフルエンザの流行ピーク時期の9月末から10月上旬に間に合わず、10月下旬になるようです。又、輸入分は12月下旬以降から供給され予定です。

接種の優先順は、検討中ですが、優先接種対象者は、医療従事者(約100万人)−>妊婦(約100万人)−>基礎疾患のある患者(約900万人)−>1歳から就学前小児(約600万人)で合計約1900万人、優先的接種が望ましい人は、小中高校生(約1400万人)、高齢者(約2100人)で合計約3500万人、総合計は5400万人です。

従って、年内は優先接種対象者全員にも行き渡らない状況で、優先的接種が望ましい人は早くて今年末からの接種になり、懸念されます。

    C.価格

     ワクチン接種は、季節性インフルエンザと別に、2回接種が必要で、その価格は無料ではな

く、凡そ7,000円になるようで、対象者にとっては負担になりそうです。

 

B持病を持っている人は、危険

現時点では毒性は弱く、季節性インフルエンザと同等以下の死亡率に留まるようです。通常の人は、発症しても1週間程度で完治するが、慢性の持病(糖尿病、人工透析、喘息、その他)に罹っている人や、妊婦、幼児・高齢者は危険と言われており、これまでの国内死亡者の事例でもそれが証明されています。

 

 

 

3.中小企業での対応

   日経連が実施した「新型インフルエンザ対策に関するアンケート」によれば、6月1日現在の対応準備状況は、次の通りでした。

@新型インフルエンザへの対応を規定した「社内マニュアル」がある企業;約60%

 年内迄には「社内マニュアル」を策定する予定の企業;約25%

A今後1年間で重点的に取り組みたいテーマに新型インフルエンザ対策に挙げられている企業

  a.継続業務の絞込み・業務継続体制の整備;約46%

  b.発生時対応訓練の実施;約27%

  c.職場に於ける感染予防・感染拡大防止の策定;約18%

  

   又、東京経営者協会が今年6〜7月に行ったアンケートでは、新型インフルエンザ対策が終了している企業は、9%に留まっているとの、日経新聞報道もあります。

 

   総じて大企業では何らかの対応を着々と準備しつつありますが、中小企業ではあまり聞きません。これからなのでしょう。その際に、参考にしていただきたい点を列挙しました。中小企業でも、その具体的な対応方法を、社長も交え一度、話し合いの場を設け、検討することをお勧めします。

 

 

 

4.企業での対応の基本的な考え方

   WHO、他の機関からも、冷静な対応が言われています。中小企業においても、他の企業リスクの

1つとして、優先度を考慮した対応が必要です。

 @怖がらず、畏敬を持って

    WHOが世界に発した警告は、「恐れ過ぎず、甘く見ず、正しく恐れることが大切だ。」

 A新型インフルエンザは、地震ではなく、台風

    ある解説者;「新型インフルエンザは、地震のように全く突然には来ない。台風のように事前の予想、予測が可能だ。」

 B対応は長期戦

    WHOも言っていますが、過去のスペイン風邪のように、今回2009年春は第1波、今後、第2波(2009年冬)、第3波(2010年冬)が本格の可能性があります。新型インフルエンザは、2〜3年の長期戦の覚悟が必要です。

 C企業リスクの1つと考える

    新型インフルエンザは、企業経営のたくさんのリスク1つです。実際に起こるか否かは確定できません。各リスクの対応策は、発生した場合の企業影響度と、発生頻度の組み合わせで決定されます。従って、各中小企業が置かれた経営環境で優先度、対応レベルが異なります。

 

D必ず起こることを前提に、事前の対策検討・準備

    但し、優先度、レベルが違っていても、新型インフルエンザの対策は、起こる事を前提にした“事前の検討”、“事前の準備”は、必須です。

幸いなことに第2波の本格化、第3波到来までに、若干の時間、猶予があります。企業のやる気があれば、事前の準備が可能です。

 

 

 

5.企業での対応方針

 新型インフルエンザ対応での企業の基本的な方針は、次の2つがあると考えています。

 

(1)社会に迷惑を掛けない企業

@自社が感染拡大の発生源にならない

 企業活動を通し、又は社員の行動を通し、企業・社員が感染源にならないようにするため、施  

策を講じる必要があります。

 例えば、企業の催事・イベントの自粛、イベント開催時の感染防止策の検討や、企業内で集団感染防止策の検討が必要です。

   A企業活動の継続

      新型インフルエンザの影響を受け、自社の製品・サービスの順調な提供が滞り、社会・関連企業(親企業、子会社、サービスチェーン企業)に迷惑を掛けないために、企業活動を継続するための施策(“事業継続計画”(BCP:Business Continuity Planを検討しましょう。

 

(2)社会に支援・貢献する企業

@自社社員への支援

例えば、社員・家族に感染の疑いを感じた時、家族の看病が必要になった時、無理して出社しない雰囲気つくり、休暇を取り易くする仕組みつくりが必要です。

 

A社会への貢献

   医薬品、マスク等は、現在既に品不足を起こしています。医薬品、感染防止・対策グッツ関連企業は生産体制の確保、増産をすることで、社会の要請に応えたいものです。

企業・社員のボランティア参加を、企業として支援しましょう。例えば、地元施設への感染対策グッツの提供、新興国への援助・支援もあります。

 

 

 

 

6.企業での具体的な施策案

(1)感染防止・感染拡大策の実践・啓蒙

@行動ガイドの作成

a.社内外での手洗い・うがいの励行、部屋の換気、必要時の高機能マスク着用

   ・手洗いは指先まで入念に、アルコール消毒も効果があります。

・うがいはその効果を疑問視するものもいますが、1日3回水によるうがいで風邪にかかるリスクが4割低減するとも言われています。

・マスクは感染者のエチケットです。感染拡大防止に着用効果はあります。

b.感染発生国・発生地域への出張規制

  感染リスクの高い国・地域へは極力出向かず、テレビ会議・電話会議で済ませる努力をしましょう。

A出勤ルールの明確化(例)

a.感染の疑いのある者の出勤可否基準(38度以上の発熱、のどの痛み、悪寒などの症状)

b.家族等近親者での感染者発生時の勤務控え(潜伏期間、1週間の出勤停止)

   ・(参考) 労務行政研究所のアンケートによると、保健所の判断が無くとも自宅待機とする企業は1/3、休業手当などは支払わないとする企業も1割強

c.発病後出勤基準(解熱後、2日間は出勤停止)

   B感染予防のための備蓄

a.マスク、アルコール消毒剤

   業務遂行上必要な最低限のものは、事前に調達、備蓄しておきましょう。

・(参考) 労務行政研究所のアンケートによると、備蓄状況は、マスクなどはほぼ100%、アルコール性手指消毒剤は85%、食料・日用品は19%、タミフルなど薬は12%

 

(2)欠勤時の業務対応

予め、次の点を整理しておきましょう。

@担当者の欠勤に伴う代替者の決定、業務内容引継ぎの仕方

A多くの欠勤者が出た場合の対策

  a.最低限維持すべき業務の選別

     例 東京ガス;ガス供給に必要な必要最小限の業務、検針など一定の顧客サービス

  b.勤務体系(PCによる在宅勤務や交替制勤務)の変更対応

     例 花王

  c.近隣店舗・本社からの応援体制の整理

     例 コジマ

Bこれら施策の従業員への周知徹底

  

()社外への対応

@出荷の遅延・停止対応

    生産力の低下に伴う製品の出荷の遅延・停止に至る場合、関連企業への影響を少なくするため、必要に応じ、以下の手を打ちましょう。

a.最重要顧客との事前調整

b.出荷製品・部品の作り置き

    

A調達の遅延・不能対応

    逆に関連企業での出荷の遅延・停止による自企業への影響を少なくするため、以下の手を打ちましょう。

      a.購入重要部品の備蓄

      b.重要部品の調達先の開拓

 

 

 

7.新型インフルエンザ関連の対策、流行状況の情報入手先ホームページ

   新型インフルエンザ対応には正しい情報・認識が前提です。以下のところで入手可能です。

@厚生労働省  「新型インフルエンザ対策関連情報」

 A国立感染症研究所感染症情報センター 「新型インフルエンザA(H1N1)の流行状況」

 

 

 

8.参考資料

  @日経新聞  2009.8.30 特集「インフル予防策  効果を検証すると」

                      9.4 記事「新型インフルエンザ 事業継続への工夫」

                 9.4 記事「ワクチン6000万人分確保」  

                    9.5 記事「ワクチン1900万人優先接種」

                      9.7 特集「新型インフル再び猛威 家庭や仕事 備えは?」

9.9  記事「医療機関名を公表へ」

                 9.10 記事「新型インフル、家族が感染  自宅待機、企業の3割」

  Aその他

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